morinokobito77’s blog

「漢字」と「かな」の面白さ

齟齬(そご)

 

日本語には同じような意味の言葉が多くあります。

たとえば

「ずれ」に関して言えば、同じような言葉が

「食い違い」「行き違い」「齟齬」などがあります。

それぞれ、どのように違うのでしょう。

 

「ずれ」・・基準、標準となるものや比較するものとうまく一致しないこと

      例)戦中派と戦後生まれの意識のずれ。

「食い違い」・・歯がかみ合わないことの意から、一致することが望ましい

        物事がうまく一致せず、ちぐはぐになることを言う。

        「齟齬」は「食い違い」の文章語。

        例)二人の証言には食い違いがある。

          彼の言行に齟齬がある。

「行き違い」・・すれ違うこと、入れ違いになることの意から物事がちぐはぐ

        になること。   

        例)双方の間に行き違いがあった。 

 

また、これらの言葉につながる言葉にも相性みたいなものがあるようです。

たとえば

「意見の」あとに、「ずれ」「食い違い」「齟齬」は〇

                    しかし、「行き違い」はх

「感情の」あとに、「食い違い」「行き違い」は〇

                   しかし、「ずれ」「齟齬」はх

「時間的に~がある」間に、「ずれ」は〇

               しかし、「食い違い」「齟齬」「行き違い」はх

「~をきたす」の前に、「齟齬」は〇

               しかし、「ずれ」「食い違い」「行き違い」はх

 

ちなみに

「齟齬」の

「齟」は「歯」+「且(供え物を置く台)」でそれをいただくという意味で「かむ」と

いう意味になります。また、「齬」は「歯」+「吾(交差する)」で歯がかみ合わないの意味です。

 

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<いつもの会話>

(宿六)<物知り顔で、女房に向かって>

    「おまえはいつも齟齬してるな。」

   <本人は、女房の顔と着物がちぐはぐだという意味で言った。>

(女房)<女房、まったく誤解>

    「そうね、じゃ今日も買い物行ってくるから留守番よろしく!」

(宿六)「??????」

   <解説:女房はルンルンでそごうデパートに行った。おわり>

 

 

常用漢字表の難しい字「璽」??(2)

難しい字「璽」の続きです。

憲法の中でこの字、見つかりましたか?

 

学校などでも憲法を習いますが、よく出てくるのが「前文」と「本文」です。

しかし、日本国憲法の「全文」まえに、もうひとつ、「上諭」(じょうゆ)という文章がついてます。

「上諭」とは

「旧憲法下において、憲法皇室典範、法律、勅令、予算等を公布する際に、その冒頭に記された天皇の裁可を示す言葉を意味する。」

つまり、天皇のお言葉です。

そのお言葉のところに押してある印影が「御璽」(ぎょじ)です。御璽は古来、天子または皇帝だけの印影を意味します。

 

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天皇の名前「裕仁」の下の印影が御璽)

 

お解かりですね。日本国憲法に出てくるため「常用漢字表」案からはずすことができなかったのです。

上諭の文が実際にどのように書いてあるかと言うと、(写真の右側部分)

「朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢(しじゅん)及び帝国憲法第七十三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。御璽」

 

つまり、日本国憲法は明治帝国憲法を改正する形で公布されたのです。これは後に明治憲法日本国憲法はつながっているという「憲法改正無限界説」派と

1945年8月14日に日本政府がポツダム宣言を受諾を法的な革命(八月革命説)として便宜的に明治憲法で改正したとする「憲法改正限界説」派に分かれてます。

 

また、「常用漢字表」の漢字は、公用文書、新聞等で使われることが明記されていますが、公用文書の起案ではこの表中で使われない漢字が11字あります。また、新聞でも7字を使わないことになってます。なぜなの?

これも面白いのですが、また次の機会に。

おわり

 

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天皇家の御紋は菊)

 

<いつもの会話>

(女房)「あんた。私の御璽しらない?」

(宿六)「おまえ!御璽は天皇さまだけが使える印鑑だろう?間違えるな!」

(女房)「わたし、この家では天皇だもの。」

(宿六)「・・(抵抗不可)」

 

常用漢字表の難しい字「璽」??(1)

前にも書きましたが、現用の「改定常用漢字表」は昭和21年の「当用漢字表」、昭和56年の「常用漢字表」を経て作られたものです。

2136字あります。

このうち、1006字は小学校で習います。

学習指導要領「生きる力」別表「学年別漢字配当表」によると

(1年・・80字、2年・・160字、3年・・200字、4年・・200字

 5年・・185字、6年・・181字)で習うそうです。

覚えてますか?もう忘れた?

 

このあと、普通の人は中学・高校の6年間にあとの1130字を覚えることになります。簡単ですね。

でも、たぶんあまり見たことも無い字が常用漢字表にあるのを知ってますか?

「璽」???読めますか?もちろん書くのもちょっと無理でしょう。

これは、音読みで「ジ」、訓読みで「しるし」です。

 

この話は、また昭和21年の戦後のGHQに遡ります。

昭和21年に何があったか。昭和21年の11月3日にGHQの草案なる、「日本国憲法」が公布されました。公布後71年経った現在でも、このGHQ憲法を守ろうという、憲法があれば平和が保てると主張する、護憲政治団体がまだいます。(この話はまたつぎの機会に)

 

そうです。問題の「当用漢字表」ができた年です。「日本国憲法」の公布が11月3日、そして「当用漢字表」の告示が11月16日なのです。

 

もうお解かりでしょう?なにまだ解らない?

 

つまり、「日本国憲法」のあとにできた「当用漢字表」には当然、憲法に使われている漢字は全部含まれなければならなかったのです。そのために、日常では使うことの無い漢字「璽」が無理に入れられたのです。

 

それでは、日本国憲法のどこに出てくるのでしょうか? 自分で探して見てください。

なに?冷たいとな。

話が長くなるので、つづきは次回ということに。

おわり。(ヒントは<いつもの会話の中に>)

 

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<いつもの会話>

(女房)「あなた、昨夜はだいぶ遅かったわね。」

(宿六)「組合の寄り合いがもめてよ。」

(女房)「・・寄り合いがもめると、何でシャツに赤い口紅がつくわけ?」

(宿六)「ギクッ。」

   <宿六防御体勢>

   <女房すかさずその前に攻撃・・あっけない終戦

 

 

 

「じゅんしゅ」で「遵守」と「順守」正しい漢字はどっち?

「じゅんしゅ」と読む漢字で「遵守」と「順守」がありますが、どっちが正しいと思いますか?

実はどちらも正しい漢字です。ただし、厳密に言うと

  官公庁などの文書は・・・「遵守」

  テレビ・新聞は・・・・・「順守」です。

日常ではどうしてもテレビ・新聞の「順守」が目に付く機会が多いのではないでしょうか。

実はこの「遵」という漢字は歴史の波に翻弄された、悲しい漢字なのです。

 

前回にたしか「当用漢字」と「常用漢字」の話をしましたよね。

戦後進駐軍のときに、将来、漢字を廃止するまでのつなぎとして制定された「当用漢字」でした。1850字の漢字ですが、その後1954年(昭和29)に国語審議会が審議した「当用漢字補正試案」(資料)なるものを出します。

その「当用漢字補正試案」なるものの中に、将来、なくすべき漢字28字がありました。「遵」の漢字もそのなかにあったのです。

 

テレビ・新聞はこの「当用漢字補正試案」に敏感に反応して「遵守」を「順守」に書き換えました。

しかし、官公庁は「当用漢字補正試案」はあくまでも試案であり、あくまでも現用の「当用漢字」が根拠として「遵守」のままとしました。

 

時は移って、1981年(昭和56)GHQの呪縛(漢字廃止)から抜け出て、やっと「常用漢字表」ができました。当用漢字1850字をそのままに、新たに95字を加えて1945字なりました。

つまり、消されるはずだった「遵」の字は消されること無く生き残ったのです。

 

しかし、テレビ・新聞業界は「順守」を四半世紀近くも使ってきたので、もと戻すことなく今後も使うことを決めました。官公庁はなんら問題なしと「遵守」を使っています。

お解かりいただけましたか。

どちらでも、ほとんど意味は同じです。厳密にはまったく同じではありません。興味のある方は調べてみるのも面白いでしょう。

 

次回は、常用漢字表にある難しい漢字「璽」(読み方:ジ、しるし)についてです。こんな難しい日常ではほとんど使わない漢字が何で常用漢字表の中にあるのか。これも歴史が深く絡んでました。

 

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<いつもの会話>

(鬼女房)「あなた!ちょっと出かけてくるからしっかり留守番(るすばん)

      しててよ!」

(宿六) 「またかよ。あんな派手な着物着きて(ぶつぶつ・・ついでに顔も隠せ)」

(鬼女房) 「♪~♪~」

    <夜遅く鬼女房帰宅、鬼女房びっくりして>

(鬼女房)「あんた!なに酔っ払ってんのよ!」

(宿六) 「しっかり~、るしゅばん(留酒番)してま~した。ういっ。」

(鬼女房)「き(鬼)き(鬼)!!」

「常用漢字表」と「当用漢字表」

 

私たちが現在日常に使っている漢字は「常用漢字表」に載っているものです。

厳密にいうと「改定常用漢字表」です。常用漢字表はすべて内閣告示です。

 

常用漢字表」が最初に作られたのは1923年(大正12年)1962字でした。

現在の「改定常用漢字表」が作られたのが2010年(平成22年)2136字あります。

最初の「常用漢字表」から現在の「常用漢字表」まで約90年の間に何回かに改定がありましたが、一度だけ名前が変わった漢字表がありました。

それが「当用漢字表」1850字です。大東亜戦争の終わった翌年昭和21年11月16日に公布されました。

 

なぜ、この戦後の漢字表だけが名前が違っているのか?

それは「当用漢字表」の持つ意味が、他の「常用漢字表」とは違っていたからでした。

とりもなおさず、終戦当時日本にいた連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領政策からきているのです。

 

GHQのなかにジョン・ベルゼルという若い将校がいました。彼は日本における漢字や仮名は日本人の教育の妨げになっていると考え、漢字・仮名を廃止してすべてローマ字にすべきと提案し、その方向で改革を進める過程で「当分の間使用する漢字表」という意味で「当用漢字表」は作られたのです。

 

日本も反対しますが、ジョン・ベルゼルは昭和23年8月に持論証明のため無作為に抽出した日本人、15歳~64歳の老若男女約20000名に識字のためのテストを強制しました。結果は100点満点で平均点が78.3点という高得点で日本人の識字率の高さと漢字の影響の無さが証明されました。

当時の責任者の柴田武(当時東大助教授)が試験結果をジョン・ベルゼルに持っていくと、ジョン・ベルゼルは試験結果の改ざんを要求しました。しかし、柴田武ははっきりと拒否しました。日本の漢字が生き残った瞬間でした。(柴田先生偉い!)

 

その後、日本は独立し、1981年(昭和56年)にもとの「常用漢字表」の名前で生まれ変わりました。漢字の中にはこのような歴史的変遷のなかで翻弄された漢字もあります。詳しい話はまたの機会に。

おわり。

 

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いつもの会話

(女房)「あなた!掃除終わったら、洗濯もね。早くしないと日が沈むわよ。」

(宿六)「・・ぶつ・・ぶつ・・」

(女房)「なに、ぶつぶつ言ってんの!」

<ぶつぶつの解説>

(・・「匁子」(当用漢字表にあった名前の女をもらったのが間違いだった。))

<追釈>

(・・「匁子」っていうから軽いかと思ったらどんどん重くなってきやがった。「匁」(もんめ、重さの単位で軽い。))

 

日本、「ニホン」と「ニッポン」どっちが正しい?

 

「日本」は「ニホン」と「ニッポン」どっちの読み方がが正しいと思いますか。

どっちも正しいのです。

 

簡単に言うと

この「日本」という国名が出てきたのは大宝2(702年)第7次遣唐使の頃です。

それまでの日本の呼び名は「倭」とか「倭国」と呼ばれてました。

 

大宝元年には天皇中心の中央集権国家体制を作るための「大宝律令」という日本で始めての法律といわれるものもできました。

 

この頃の「日本」の発音は「ニチポン」または「ジツポン」でした。

(「ニチ」は呉音で「ジツ」は漢音です。)

 

つまり「ニチポン」→「ニッポン」

   「ジツポン」→「ジッポン」の二つが一番古い呼び方でした。

この頃の文章は全部漢字でした。

 

平安時代になり、「ひらがな」ができます。しかし、ひらがなには「促音(小さい「っ」)」や「半濁音(ぴゃ、ぴゅ など)」の表示がありませんでした。

そこで「ニッポン」のひらがな表示は「ニホン」になり、発音も「ニホン」がでてきます。そう、「ニホン」は新しい呼び名、それも間違った読み方でした。

 

「日」には「にち」「じつ」「ひ」「か」などの読み方はありますが「に」という読み方はないのです。「日本」のときだけ「に」と読みます。

 

この後、「ジッポン」が消えて「ニッポン」と「ニホン」だけがが残ったというわけです。

 

1934年(昭和9)「ニッポン」に統一しようという閣議決定はありましたが成立し

          ませんでした。

2009年(平成21)政府は国会で「統一の必要なし」と答弁してます。

           (麻生太郎総理大臣)

 

読み方はどちらでもいいのですが、固有名詞ははっきりしているものが多いです。

日本銀行「ニッポンぎんこう」、日本航空「ニッポンこうくう」

日本経済新聞「ニホンけいざいしんぶん」、日本大学「ニホン大学」

 

日本銀行は1885年(明治18)にできましたが、このときに政権を握っていたのが薩摩と長州だったので「ニッポンぎんこう」と読ませたという説があります。

大阪の「日本橋」は「ニッポンばし」、東京の「日本橋」は「ニホンばし」のように関西は「ニッポン」で関東は「ニホン」が多いとかで。

 

また、歴史の途中で消えた「ジッポン」は中国に渡り、中国人からの、日本に来た事もないマルコポーロの又聞きで「ジパング」になり、最終的に「ジャパン」(JAPAN)になった。とか???

 

現代の日本では2003年の調査ではどちらを使うかでは「ニホン」が61%、「ニッポン」が37%と「ニホン」派が多くなってきてるようです。でも、オリンピックなどで応援するときは「がんばれニッポン!」が多いでしょう。

「ニホン」はやはり平安時代のなよなよしい感じがあるのでしょうか。それよりも何でも受け入れる日本人の柔軟性と私は考えたいですがね。あなたはどう思いますか。

 おわり

 

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いつもの会話

(かしこい女房)「あなた!今日の晩酌は「ニホン酒」にする?それとも

         「ニッポン酒」にする?」

(やど六)  「????なんか怪しいな。・・」

       「それじゃ無難に「ニホン酒」でいいや。」

      <出てきた酒の徳利が小さい!>

(やど六)  「いつもの徳利よりやけに小さいじゃねえか?」

(かしこい女房)「そういつもの量を半分にして入れたの。今日はそれだけ。」

(やど六)  「詐欺!ペテン!」

        

 

 

 

「々」はなんて読むの?

 

日本語の文章には不可解な文字が時々出てきます。しかし、子供のころから見慣れ、聞きなれている健聴な日本人は不思議に感じません。初めて日本語を勉強する外国人、ろう者(ともに第2言語学習者)にとっては難解なものです。

 

たとえば「々」の字です。

なんと読むのでしょう?何画の漢字なのでしょう?3画かな?

漢和辞典を引いてみましたが載ってません。漢字ではないの?

 

でも「日々(ひび)」「近々(ちかぢか)」「個々(ここ)」などの漢字はあるよね?

実は「読み」はないのです。いや正確には「読み方」はあるのです。

?????

頭がこんがらかってきたようですので正解を。

「々」は日本文字表記で使用される約物(やくもつ)の1つです。

(よけいに解らなくなった?)

   「約物」・・言語の記述に使用する記術・記号類の総称。特殊記号

約物「々」の記号の名称は「同の字点」(どうのじてん)です。

「同」の別字体「全(本当は「王」でなく「工」)」が変化とも、「二の字点」の変化とも言われてます。字形から俗に「ノマ」とも呼ばれます。

 

同じ漢字を重ねる時に2文字目以降の文字の代用として用いられます。

したがって、普通は前の文字と同じ読み方になります。(濁音化することもあります)

「日々(ひび)」「近々(ちかぢか)」「個々(ここ)」

などです。

でも「云々(うんぬん)」という読み方もあります。これは、話は逸れますが「うん」の先の「ん」があとの「う」に影響して「うんぬん」と発音します。言語学上では「連声(れんじょう)」といいます。他に「観音」(かんおん)→(かんん)などがあります。

 

約物のはなしに戻りますが、ほかには「一の字点」「二の字点」「くの字点」「のの字点」「庵点(いおりてん)」などがあります。またこの話は次の機会にしましょう。

 

最後に、一番有名な約物は「句読点」「括弧」などです。

(なに?これを先に言ってくれればいいのにってですか。ごめんなさい。)

 

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いつもの会話

(宿六、掃除機をかけながら)

  「なんでおれ日々掃除なの?。。ぶつぶつ。。」

(女房、テレビ見ながら)

  「云々いってないで早くしなさい。あんたが買ってきた掃除機でしょう?。」

(宿六、涙目)

  「苦々苦々。。はぃはぃ(81)。」(新語?)